第23章 17歳
互いに互いを甘く想いながら、いつか王都に一緒に行く約束をしたリヴァイとマヤは、あたたかな気持ちを抱きながら再びカップボードに視線を向けた。
まるで王都のティーカップ専門店さながらの品揃えであるので、まだ半分も見ていないのだ。
ひとつひとつゆっくりと、ティーカップを愛でていく。絵柄も数多くあれば、その形も色々と揃っている。
定番の形のものから、かなり浅めのもの、飲み口が大きく広がったピオニーシェイプと呼ばれる伝統的な形のもの、背の高いカップの真ん中がくびれたヴィクトリアンシェイプまで。
「こんなに色々なデザインや形のカップがあるなんて…。本当にすごい…」
マヤは感心しきりだ。
「兵長、見てください。これ、ソーサーが丸くないです」
マヤが指さしたカップの受け皿は確かに円形ではなく、何かをかたどっているようだ。
「……なんだろう?」
割れ物のカップ&ソーサーを気軽にさわる訳にもいかず、マヤは左右上下と様々な角度から見ては、ソーサーが何の形なのか考えている。
「雲… かしら…? あっ!」
急に正解にたどりついたマヤは嬉しそうにリヴァイの方に振り向いた。
「四つ葉のクローバーです!」
「四つ葉のクローバー?」
それはリヴァイにとっては聞き慣れない言葉だった。
「ええ。最初は何かわからなかったけれど、ほら… カップの中に描かれてるの…、シロツメクサの花です」
「………」
リヴァイは軽く眉間に皺を寄せて、黙ってしまった。
「ご存知ないですか?」
「……ラドクリフじゃあるまいし、花には詳しくねぇ」
その答えにマヤは微笑んだ。
「ふふ。まぁ、ラドクリフ分隊長はちょっと特別ですよね」