第23章 17歳
………!
マヤはリヴァイの言ったある単語に反応する。
「ティーカップ専門店…? そんな素敵な響きのお店が王都に?」
「あぁ」
「ティーカップだけを売っているんですか?」
「いや、ティーポットやカバーなんかも売っている。だがやはり、カップが多いな」
「そうなんですね。行ってみたいなぁ…」
「行けばいいじゃねぇか」
何の気なしにそうマヤに告げたリヴァイは、悲しそうなマヤの声にぎょっとする。
「……王都なんてそう簡単に行けないです。というか行ったことないです。一度くらいは行ってみたいけど…」
「そんないいもんじぇねぇぞ? クソみてぇに人は多いし…」
「でも!」
マヤの頬がぱっと紅潮する。
「デブナム・リドリーを売っているし、ティーカップ専門店だってあるんでしょう? そんなの行ってみたいに決まってます!」
「そんなに行きてぇなら、いつか連れていってやる」
「え?」
思いがけない “連れていってやる” の言葉。
……どうしよう、そんなつもりじゃなかったのに。
ただ単に一度も行ったことのない王都に、煌びやかなイメージの王都に、どんなものでも手に入る夢の都に… 憧れていただけだった。
だから、王都を否定するようなリヴァイ兵長の言葉に過剰に反応してしまったのだ。
そんな… まさか、兵長に王都に連れていってほしいなんて、そういう意味ではなかったのに。
「連れていってくださらなくて大丈夫です。いつか自分で行きますから」
「……あ?」
迷惑をかけてはいけないと慌てて断りを入れれば、不機嫌なひと声が放たれた。
「あの… 兵長にご迷惑をかける訳には…」
しどろもどろに言い訳めいた言葉をつづけようとした矢先に。
「別に迷惑じゃねぇから…」
「………」
「行きてぇんだろ?」
「はい…」
「なら、連れていってやるから」
マヤがリヴァイの顔を見上げると、その表情は優しくて。そしてどことなく甘くて。
だから素直になれた。
「では… お願いします…」