第23章 17歳
「うわぁ! 素敵なカップがいっぱい!」
胸の前で両手を組んだマヤは、目を輝かせて飾られているティーカップを食い入るように見ている。
実は入店して紅茶の香りに魅了されたあとは、このティーカップの陳列が気になっていた。ぱっと視界の隅に入ったものだけでも、三十客はあるだろうと思った。
だが今こうしてカップボードの前に立ってみれば、その数は三十どころではなかった。オープンシェルフには、適度な間隔で陳列されたカップ&ソーサーが十五客ずつ。シェルフは三列あるので、合計四十五客のカップ&ソーサーが飾られている。
誰もが知っている定番のもの。可愛らしい小花の絵柄のものから、打って変わって大柄で大胆な花のデザインのもの。シンプルな無地だったり、水玉模様にストライプ、幾何学模様だったり。鳥や動物に… 魚をモチーフにしたものもある。めずらしい昆虫の柄まである。蝶にてんとう虫、とんぼ。
「見たことのないカップがこんなに!」
マヤは興奮を隠しきれない。
故郷のクロルバの雑貨店では販売していない大胆なデザインのもの。斬新な図柄のもの。
「あっ!」
声を上げたマヤにリヴァイが訊く。
「なんだ」
「これ…」
真ん中の棚の左端から三番目に飾られているカップを指さした。
「野いちごの柄かと思ったらてんとう虫で、びっくりしちゃいました」
「めずらしいな」
「はい。本当に、こんなに色々なティーカップがあるなんて…」
マヤは一歩下がってカップボードを眺めて、はぁっとため息をついた。
「まるでティーカップの博物館です」
「そうだな。王都にあるティーカップ専門店より多いかもしれねぇな」