第23章 17歳
マヤの疑問はもっともだ。俺だって最初は不可解に思ったものだ。
「若いころに王都で商売をしていたらしい。その伝手が今も生きているんじゃねぇかと思うが…」
リヴァイは思い出していた。自身がマヤと同じ疑問を持ち、リック・ブレインにそれをぶつけた日のことを。
爺さんは、とぼけた顔でこう言った。
「なぁに、私にも兵士長のように若かりしころがございましてね…。ちょっと王都で紅茶を生業(なりわい)にしていただけのことですよ」
それで? と先をうながすように爺さんの顔を見つめてはみたが、それ以上は決して語りはしなかった。
人には、ふれてほしくない一面があるものだ。
恐らく爺さんにとっては過去のことは掘り下げられたくないのだろうと判断し、その話題はそれきりにしている。
「そうなんですね、王都でお店を…」
マヤはリヴァイの返答を聞いて、想像してみた。
……もしかしたらお父さんがデブナム・リドリーを買ったお店が、リックさんのお店だったり?
もしそうならば人のつながりなんて、どんなところにあるかわからないわ。
マヤはなんだか無性におかしくなってきて我知らず微笑んでしまう。
「……父が王都でデブナム・リドリーを買っていたのは、リックさんのお店だったのかもしれないんですね?」
「そういう可能性もあるだろうな」
「ふふ、もしそうだったら楽しいですね」
マヤは父とリックが過去に接点があったかもしれないと想像をふくらませては笑い、軽い足取りでティーカップを飾ってあるマホガニー製のカップボードに近づいた。