第23章 17歳
その反対側、すなわち入り口の扉を入って右側には、これまた壁の幅いっぱいの商品陳列棚が腰の高さから天井近くまである。そしてその棚にはこの店の主役である紅茶の茶葉たちが、様々な形で並べられていた。瓶に詰められたもの、缶のもの。布の袋に入れられた小さなサイズのもの。
特に目をみはるのは、その缶の種類の多さだ。ざっと見ただけでも二十種類はあるだろう。赤い缶、緑の缶、黒い缶。金色、銀色、白に青。形だって色々ある。ほとんどが円筒か四角いものであるが、中には六角柱のものも。さすがは紅茶専門店と優雅な書体で看板に堂々と書かれているだけのことはある。
そして入り口の扉を入って正面には、カウンターが備えつけられている。素材はもちろん紅褐色の光沢が美しいマホガニーだ。
カウンターの上には量り売り用の紅茶の茶葉が入った大きな瓶が七つ並んでいる。その端には控えめに勘定台があり、その先には店主のリックが出ていった奥に通じる扉も、目立たない感じで存在していた。
……どう見ても、ここに紅茶を飲む場所はないわ。
ざっと店内を見渡したマヤは、あらためてそのことを確認したのち納得したかのように、ひとりでうなずいた。
その様子を隣でじっと見ていたリヴァイは、マヤに答えを告げる。
「あぁ、飲める。馴染みにならねぇと爺さんは飲ませねぇがな」
「……そうなんですね。でも… どこで?」
そう言いながらマヤは、目の前の立派なマホガニーのカウンターに目をやる。
……スペースに少し余裕があるから、ここで立って?
いや、でもまさか。
こんな優雅な紅茶専門店で立ち飲みだなんて。
マヤの疑問はすぐに解消された。
「奥に部屋があるんだ」
切れ長の瞳の視線の先には白い壁と同化したような、目立たないたたずまいの白い扉が。
「……なるほど」
マヤは扉の先に広がる空間に想いを馳せた。