第23章 17歳
マヤはリヴァイが愛用している白いクラバット姿が好きだ。
人類最強と称されて、ときにはその手をどす黒い血に染めても。地下街出身の元ゴロツキだと貴族に揶揄されようとも。
ある人はその白は、異常なまでの潔癖症の表れだと。ある人は空を鋭く、閃光を放ちながら駆け抜ける稲妻の白のようだと。そしてそれは強靭な強さの表れだと。
ミケ分隊長は確か… “素直” だと言っていた。
その白は、どんな状況においても、何ごとも冷静に判断して。何ものも受け入れる柔軟さを表す機知。
それらはすべて、そのとおりで。
しかしマヤには、それだけではない気がして。
……きっと兵長の白は、誰よりも優しい白。
場合によっては黒にだってなる覚悟を秘めた強い白。
それは、マヤにはまぶしくて。
……どうしようもなく惹かれるの。
マヤがそんな想いを胸にリヴァイの一歩後ろを歩いていると。
「ここだ」
「……白い…」
思わず口をついて出た “白”。
マヤの目の前にたたずんでいたのは、真っ白な壁と扉がエレガントな店構えの紅茶専門店 “カサブランカ”。
黒や茶の落ち着いた色彩の紳士衣料の店舗がつづいた道で、そこだけが白く、ある意味他店とは異質の輝きを放つ。
明度の高い白の持つ作用なのか、見る者の心さえも洗うような。浄化されて気分も新たに、その白い扉をひらく者を魅惑の香りの世界へいざなう。
………!
めまいがするような感覚。
紅茶の茶葉のあまたの香りが織り成す奔流にのみこまれそうになる。
こんなにも多くの茶葉の香りが一度に押し寄せてきた経験がない。父の店ではせいぜい、この半分ではなかろうか。
……すごい種類の紅茶だわ。圧倒される…!