第23章 17歳
マヤが青灰色に見惚れた一瞬、今までで一番強く風が吹いた。
その風で桔梗の花が、なおのこと揺れたとき。
「いい風だったな」
リヴァイの声が風に乗る。
「……きっとお前の祖父母が大笑いでもしたんだろうな」
「……はい!」
……嬉しい!
私の一方的な祖父母の話を聞いてくれただけではなく、想いに寄り添ってくれた…。
迷惑だったかもしれないと心配になったが、話して良かったとマヤは心から思った。
「行くぞ」
「はい!」
ヘルネの街への一本道を、リヴァイとマヤはゆっくりと歩んだ。二人の影が通り過ぎるたびに、道端の草花がそよいだ。
街へ到着した二人は、中央に位置する広場へとりあえず向かった。四方八方に放射状に伸びている道。そのすべての道を通ったことがあるかと問われ、YESと答える人の方が少ないかもしれない。
なぜならば自然と道ごとに、特徴や雰囲気が似通った店が集まっているからだ。
マヤのよく行く雑貨屋のある道には、ならびに女子の行列でいつもにぎわうケーキ屋や、ちょっとおしゃれな髪留めやリボン、チープではあるが可愛らしいペンダントや指輪などを売っているアクセサリーショップがある。そしてなにより道の入り口には大人気のパン屋 “アメリ” が存在感を示している。
そのちょうど対角線上にある向かいの道の入り口には “アメリ” のライバル店ともいえる “バンディッツ” が渋い店構えで堂々と建っている。そして紳士用の衣料品店や靴屋が軒を連ねており、最奥にはバーが数軒。
他にも食料品店がひしめき合う道もあるし、ちょっとマヤなどうら若き乙女には近寄りがたい雰囲気の道もある。
アクセサリーショップにしても先ほど紹介した手軽な値段で買える店だけではなく、マヤなど一般兵士にはおいそれとは手の出ない高価な貴金属の店もあるのだ。