第23章 17歳
優しいペトラ。友達想いのペトラ。
ペトラの指が髪にふれた。
そのぬくもりを通じて、その明るい声を通じて極度の緊張から、がちがちになってしまっていたマヤの心はゆるやかにほどけていく。
机に置いてある小さな卓上ミラーの楕円を覗きこむと、鏡越しにペトラの薄い茶色の瞳と出逢った。
「うわぁ!」
「な、何!?」
目が合った途端にペトラに大声を出されて、マヤはびくっとする。
「マヤの髪って見かけどおりにさらさら!」
「そう?」
「うん、癖がないから編みやすいわ~!」
快活に笑いながらも、ペトラの指はマヤの左サイドの髪を編んでいる。器用に指先を動かして、あっという間に編みこんでしまうと次は右サイド。そうして編みこんだ両サイドの髪を、前もって分けておいたトップの髪と合わせてハーフアップにまとめる。
卓上ミラーの中で、魔法のようにサイドの髪を編みこんでできあがったハーフアップの髪型に、マヤは目をみはった。
「できた!」
叫んだペトラの声は満足そうだ。
「どう?」
「……ペトラ、すごい!」
マヤは目を輝かせて顔を右や左に少し動かして、綺麗に編みこまれたサイドを確認する。
マヤが嬉しそうに髪型を見ている様子にペトラの声も躍る。
「気に入った?」
「うん。なんだか… 私じゃないみたい…! 輪郭がすっきり見える気がする…」
「あはは。綺麗めにまとめてみたから、いい感じでしょ?」
「うん! ありがとう、ペトラ!」
「結び目んとこに、髪留めかリボンかつけたいんだけど…」
「あっ、この引き出し…」
マヤは机の引き出しを開ける。そこには幾つかの髪飾りやアクセサリーが、きちんと整頓されて入っていた。
「可愛いのがいっぱいあるね。どれがいいかな…」
そうつぶやきながらペトラは薄桃色のリボン型の髪留めを選びかけたが、ふと手を止めた。
「服はどれを着るの? あそこにかかってるやつ?」
と、ポールハンガーにかけてあるブラウスとスカートに目をやる。