第23章 17歳
鏡の中のペトラの視線を追い、マヤも服を見る。
「うん、そう。迷ったんだけど、結局この間ヘルネで買った新しいのにしたの」
マヤが少ない手持ちの服の中から選んだのは、ヘルネで購入した麻のブラウスと膝丈のフレアスカート。
ブラウスは、色はオフホワイト。ほんの少し広めの襟ぐりは愛らしいフリルネック。七分袖はパフスリーブになっていて、ゆったりとふくらんでいる。
膝丈のフレアスカートはシンプルなデザイン。鮮やかな水色が目を引く。
「初夏らしくていいじゃん。麻のブラウスも涼しそうだし。でも麻って皺くちゃにならない? だから私はあんま買わない」
そう言って話の内容に合わせたつもりなのか、ペトラは鼻に盛大に皺を寄せてみせる。
そんなひょうきんな友の顔に、ふふっと笑みを送りながらマヤはここぞとばかりに説明を始めた。
「なんかね “防シワ加工” っていうのがしてあるらしいの。それで予算オーバーだったんだけど、一緒に買う予定にしていたTシャツをあきらめてね、これを買ってみたんだ。私もペトラと一緒で麻のシワには困ってるから…。でもやっぱり肌ざわりが好きだし、涼しいのが捨てがたいのよね。店員さんが言うには、皺がほとんど気にならなくなるらしいの!」
めずらしく鼻息荒く力説するマヤを微笑ましく思いながらペトラは相槌を打った。
「へぇ…、そうなんだ。皺が気にならなくなるなら私だって麻の服を買いたいわ」
「でしょう~!」
「だからマヤのこのブラウスのシワ具合をチェックして、いい感じだったら私もその “防シワ加工” ってのを買ってみようかな」
「そうしてみて」
「うん」
ペトラは軽くうなずくと、髪留めの入っている引き出しに視線を落とした。
「この上下だったら、うーん…」
白い花をモチーフにした清楚なデザインのバレッタと、華やかな白銀色のビーズを使用したヘアコームの間でペトラの指はどちらにしようかとさまよっていたが、ヘアコームの上でぴたりと止まった。
「これがいいかな!」