第23章 17歳
「マヤの髪って見かけどおりにさらさら!」
「そう?」
「うん、癖がないから編みやすいわ~!」
日曜日の午前中、時間は11時過ぎ。
マヤの部屋で約束どおりに、ペトラが髪を編みこんでいる。
自身も調整日であるペトラは、いつもの調整日よりは気持ち早めに起床したのちに急いで朝食を済ませて、勢いよくマヤの部屋にやってきたのだ。
一方、昨夜から胸がどきどきしてなかなか寝つけず、眠りの浅かったマヤは、いつもの朝より随分と早く目覚めてしまい食堂には一番乗りになる始末。
リヴァイ兵長との待ち合わせ時刻は午後の2時。
それを知ったペトラの “午前中に編みに行くから部屋で待ってて!” の言葉にしたがって、ずっと待機していた。
待機していたといっても、じっと座っていた訳ではない。
着ていく服を決めたはずなのに、やっぱりこっちの方がいいかな? ううん、ちょっと気合を入れすぎよね、普段の格好で行く方がいいってば、でもあまりにも普段着っぽいと兵長に失礼じゃないかな? …などと壁に立てかけてある姿見の鏡の前でああでもない、こうでもないと堂々めぐり。
もう…! 服装のことを思い悩むのはやめよう!
そう決意して鏡の前から立ち去っても。
椅子に座ってみても、ちょうど今読んでいる本もなく、落ち着かなく立ち上がってしまう。
部屋を右に左にうろうろと。
ベッドに腰かけてみたり、窓を開けたり閉めたり。
とにもかくにも落ち着かない。
……こんなとき、読む本があったら…!
本があったところできっと、いや絶対に落ち着くはずがないのではあるが、冷静さを欠いた今のマヤにはそれがわからない。
……恋嘘、全部読んじゃったからなぁ…。せめて続編があったら良かったのに。そうしたら…!
落ち着かないのは今手元にない “恋と嘘の成れの果て” のせいにしたりして。
もう駄目だ。
部屋を飛び出して走ってどこかへ逃げよう。
そう思い部屋を出ようと扉に一歩近づいたそのとき、唐突にペトラが入ってきた。
「ごめん! 待った?」