第23章 17歳
ふんふん、ふふん♪
鼻歌まじりで第一分隊第一班に割り当てられている棚の前に立つ。マヤの立体機動装置はタゾロの装置の隣にきちんと置いてある。一つ下の棚には同じ班の新兵三人の装置が、少し乱雑に並んでいた。
自分の立体機動装置を手に取ったマヤは、何気なくふと棚の上に目をやった。
……あっ!
棚は収納の容量を第一に考慮して備えつけられており、天井ぎりぎりまである。したがって最上段の棚には、脚立を使わないと利用できない。だから普段は使わない予備の立体機動装置や部品が置かれている。
その最上段の棚から立体機動装置が落下するのではないかと思うくらいに、はみ出ていた。
……落ちてきたら危ないわ。
マヤはきょろきょろと倉庫を見渡し、脚立を見つける。
高い天井付近まで届くサイズの脚立はかなりの重量で、小柄なマヤはよろめきながらなんとか運んだ。
一歩足をかけると、ぎしっと金属音がする。
ぎしっ、ぎしっと確実に上へ。あと一歩上がれば最上段の棚に手が届く。最後の一段へ右足をかけようとしたそのとき。
ばたんという扉の開閉音につづいて、甲高い女の声がしたことに驚いてマヤはぴたりと動きを止めてしまった。
「リヴァイ兵長!」
甲高い声は悲鳴のようにそう叫んだ。
「お話があるんですが…!」
「……なんだ」
流れてくる低い声には、なんの感情も読み取れない。
「あのですね…」
甲高い声はそう言ったきり、次の言葉をなかなか切り出さない。
倉庫の中は今、釘が一本落ちてもわかるくらいに静かで。
……どうしよう…!
マヤは非常に困った事態に巻きこまれたことに気がついた。
右足は脚立の最後の段にのぼろうと上げかけた姿勢のままでいる。この右足を予定どおりに上段に乗せても、下段に戻しても、必ず “ぎしっ” と音がしてしまう。
マヤのいる棚の場所は、扉のすぐそばにいるであろうリヴァイと女子兵士の場所からは見えない奥の列にある。
だから音さえ立てなければ… ここにいることは、ばれないはずなのだ。