第22章 一緒にいる時間
食堂に来るのなんか面倒に思うことが多かった。食事も忙しさにかまけて抜くことは、もはや日常。
だがマヤの言葉にほだされて来てみれば。
マヤと一緒にいる時間は心地良い。
ただの食堂と思っていた場所も、ただの食事をするという行為も、俺にとって特別なものに変わる。
許される限り、こうして… こいつと二人でずっと…。
淡い思慕の視界の先では、いつしか食べ終えたマヤが白く華奢な両手をいつもどおりにきちんと合わせていた。
「ごちそうさまでした」
そうして自分を待ってくれていたリヴァイ兵長の顔をまっすぐに見つめて。
「お待たせしてしまってすみません。私、食べるのが遅くて…」
「別にかまわねぇ」
……食う時間が長ければ長いほど、俺はお前を見ていられる。
「ゆっくり食べろ」
「はい」
「行こうか」
食器を返却し食堂を出た二人は、一般兵士の女子の居室棟の入り口まで黙って歩いた。
「お疲れ様でした」
マヤは立ち止まって頭を下げると “失礼します” と言って自室の方へ去ろうとしたが、その行動が許されることはなかった。
「あぁ、お疲れ」
と返したリヴァイが、さも当然のように居室棟の廊下を進んだからだ。
一番奥に位置する自分の部屋に向かって進む兵長にマヤは慌てた。
「すみません! 兵長、どちらへ?」
その問いに歩みを止めたリヴァイは不機嫌そうに振り返った。
「……決まってるだろうが。部屋まで送る」
……やっぱり!
「えっ、あの、一人で帰れますので大丈夫です」
「……あ?」
……食堂で一緒に食事をしていただけでも新兵の子たちの視線を感じたのに、部屋まで送ってもらうなんてとんでもない。
それにまだ時間だって早いし、部屋まで送ってもらう必要なんか全然ない。