第22章 一緒にいる時間
「……違います!」
弾かれたように顔を上げたマヤの頬は赤い。
「いい加減な気持ちなんかじゃないです。兵長には、ちゃんとごはんを食べてほしいんです…!」
「俺はお前と一緒にここに来てメシを食ってる。これでいいんだろう?」
どこか諭すようなリヴァイの声は優しくて。
「……はい」
「なら… いいじゃねぇか。謝るな」
「……はい」
「そもそも失礼だとか思うくれぇなら、最初から俺は来ない」
声の調子がほんの少し変わって、思わずマヤはリヴァイの瞳を確認する。そこには今の状況を楽しんでいるかのような愉悦の色が浮かんでいた。
楽しそうに輝く青灰色の瞳に魅入られたマヤは、心から救われた気持ちになっていく。
……良かった。兵長は気を悪くしてないし、怒ってもない。むしろ楽しそうだわ。
「……すみませんでした」
「謝るなと言っただろうが」
「ごめんなさい… あっ!」
「おい、謝るなと…」
リヴァイとマヤは思わず顔を見合わせる。
「……前にもこんなこと、ありましたね」
「そうだったな」
ペトラがハンカチを置き忘れた食堂のテーブルで、初めて向かい合って座った日のことが二人の脳裏によみがえる。
「ハッ」「ふふ」
穏やかな気持ちに包まれたリヴァイとマヤは。
「とりあえず食うか」
「はい、冷めてしまう前に」
そうやってスプーンで口に運んだ芋のスープは、調査兵団に入団して以来はじめてと言っていいほどの、甘くて美味しい幸せな味がした。
すぐに食べ終えたリヴァイは、まだ食事をしているマヤを眺める。
少しずつ口に運び、ゆっくりとよく噛み、味わい、楽しむ。そのひとつひとつの行為にマヤの食べ物への感謝の念のようなものが自然と感じられた。