第22章 一緒にいる時間
「………!」
こんなに簡単に聞き入れてもらえるとは思ってもみなかった。反対ありき、拒絶ありきで何度でも。気持ちを伝えようとしていたのに。
あっけなく了承されてしまった驚きで二の句を継げないでいると、
「行くぞ」
机上の書類を綺麗に片づけた兵長は、もう部屋を出ようとしていた。
「えっ、あっ… はい!」
もうそこから、どうやって食堂に来たのかも憶えていない。
兵長の後ろを歩いたのか、前を歩いたのか。隣に並んだのか、何か言葉を交わしたのか。
座っているこの席は、どうやって決めたのだろう?
無我夢中で記憶がない。
「あの…」
スプーンでスープを口に運んでいたリヴァイの手が止まる。
「……すみませんでした…」
執務室から食堂までひとことも話すことのなかったマヤが、やっと口をひらいたかと思えば謝罪の言葉。
リヴァイは眉間に皺を寄せた。
「その… なんだか無理に… ここに来てしまって」
リヴァイは音を立てずにスプーンを置いた。
「……さっきまでの勢いはどうした」
「え?」
「執務室では俺の首に縄をつけてでも食堂に連れていきそうな勢いだったじゃねぇか」
「それは… 兵長にちゃんとごはんを食べてほしかったので…。でも… いざこうやって一緒に食堂に来てみると、すごく失礼だったのじゃないかと… 反省してます…」
最後の方はうつむいて見つめているテーブルに、吸いこまれて消えてしまいそうな小さな声になっていく。
「では明日からは来なくていいか」
「………」
そんなことを言われても、返す言葉がうまく見つからない。
「お前は… そんないい加減な気持ちで言ったのか?」
下を向いて黙っているマヤに、リヴァイは静かに言い放つ。