第22章 一緒にいる時間
時はそれから少しのち、場所は調査兵団の食堂。
「………」
マヤは今、自身が置かれている状況に困惑していた。
リヴァイ兵長と向かい合わせに座り、夕食を食べている。会話はない。少し離れた席を陣取っている新兵の女子グループが、ちらちらとこちらを見ては何か小声で話している。
……どうして、こんな状況に…。
何を言っているの、わかっている… わかっているわ!
執務室で昨日夕食を抜いたという兵長に、一緒に食べましょうと誘ったのは私。
食事を抜くのは良くないという私を、余計なお世話だと拒絶した兵長にひるまず、さらに強く意見を通してしまった。
いつもなら自分の気持ちや意見を押し通すことは、あまりしないのに。
でも引き下がることなどできなかった。
幼いころからずっと、母に諭されてきた。
「マヤ、ごはんはとっても大切なの。このパンも、このお野菜もお肉も… みんな生命(いのち)をいただいて、そして誰かが汗水を垂らして働いて今ここにあるのよ。だから好き嫌いを言っちゃ駄目。ごはんを食べないなんて、もってのほかよ。ゆっくり噛んで味わって、すべてに感謝をしながらいただきなさい」
母の教えを守ってきたからこそ、食事を抜くのはいつものことだなんて言いきる兵長に黙っておけなかった。
強くて優しい兵長は、他者をいつも気遣っている。
でももっと… もっと自分を大切にしてほしいと思った、感じた、願った…。だから気づけば訴えていた、ご自分を大切にしてほしい、きちんと食事をとってほしいと。
そして最後に “一緒に食べましょう” と言ったとき。
そう言いながらも、拒絶されるのではないかと思っていた。拒絶されたならされたで、想いが通じるまで何度でも伝えなくちゃと心に決めたそのとき。
「あぁ、わかった」
私の顔を真っ向から見つめているのに、どこか遠いところをさまよっているような様子だったリヴァイ兵長は承諾した。