第22章 一緒にいる時間
「リヴァイ、あなたの優しさはあなたの強さでもあるわ。その優しさをちゃんと自分にも向けてあげてほしいの。自分を大切にすることが、相手を大切にすることにつながるのよ。だから…」
母はそう言うと、手にしていたパンを二つに割った。
「一緒に食べるのよ、リヴァイ」
そうやって分けたパンの味が、優しかった母の想いとともに胸によみがえる。
そうだ。
今まで自分に対して食事を抜くなと言ってきた者は誰もいない… というのは思い違いだ。
母さん…。
そして… あの男も。
「よぉリヴァイ、しっかり食わねぇと大きくなれねぇぜ? いつまでたってもチビのまんまでいいのかよ」
母の死後、一時期ともに暮らしたことのあるヤツのふざけた声が、今そこにいるかのように聞こえてくる。
……チッ。今も昔も気に食わねぇが、あれはヤツなりの温情だったのかもな…。
俺にはいたんだ。
俺の食うもんを気にしてくれる人が、二人も…。
そして今、マヤが。
「兵長、私がこうして執務のお手伝いに来た夜は、一緒に食堂に行って食事をしてくださいませんか?」
その琥珀色の瞳は、
「差し出がましいお願いなのは承知の上です。きっと執務に追われて気がつけば抜いてらっしゃる場合が多いのだと思います。せめて私が一緒にいるときくらいは… きちんと食事をとってほしいです」
あのときの母のものと同じように、凜として輝いている。
「だから… 一緒に食べましょう、兵長」
マヤの涼やかな声と、
「一緒に食べるのよ、リヴァイ」
母の優しかった声が重なる。
「あぁ、わかった」
気づけば、そう返事をしていた。
相手を大切に想うことは、自分を大切にすること。糧を分かち合い、ともに生きていくこと。
俺が今それをする相手は… マヤ、お前しかいない。