第22章 一緒にいる時間
……昨日は思いがけず遅くなってしまったからな。
今日は早く食堂へ行かせてやりたい。
そんな考えからリヴァイは、こう切り出した。
「今日はもう上がってくれ」
「……あっ、はい」
書類から顔を上げてマヤは反射的に壁の時計に目をやる。
「ふふ。昨日より少し早いですね」
「あぁ、晩メシを食うのにあまり遅くなってはよくねぇだろ」
気遣ってくれたんだなぁ… とマヤは嬉しくなったが “晩メシ” という言葉で大事なことを思い出す。
「……あの兵長」
「なんだ」
「昨日の夕食はどうされたのですか? 食堂に来られなかったので気になって…」
「昨日は…」
リヴァイは思い出すかのように一瞬口をつぐんだが、すぐにつづけた。
「食わなかったな」
「やっぱり…」
マヤは夕食を抜いたという答えに、思わずそうつぶやいた。そして少し言いにくいなと思ったが兵長のためを思うがこそ、と意見をぶつけた。
「余計なお世話かもしれませんが…、食事を抜くのは良くないと思います」
思いがけない意見にリヴァイは軽く驚く。
今まで自分に対して食事を抜くなと言ってきた者は誰もいない。
「………」
黙っているリヴァイをまっすぐに見つめてマヤはもう一度、少し震える声で。
「……良くないと… 思います」
「……良くはねぇかもしれないが、別に大丈夫だ。メシを抜くなんていつものことだし…」
「そんな…! いつものことだなんて。私…、兵長のお身体が心配です。きちんと食べてください」
「ハッ、本当に余計なお世話だな」
冷たく放たれた言葉にマヤは一瞬ひるんだが、語気を強めた。
「そうです。余計なお世話です。でも引き下がりません」