第22章 一緒にいる時間
……あっ。
話さなくっちゃと思っていたことを、ペトラの方から持ちかけられた。
浴場内を見渡して、他に誰もいないかを確認する。
先ほどのケイトたちが一斉に風呂から上がったので、今はペトラとマヤしかいなかった。
“安全確認” がなされた今ここで、話そうと決める。
「そのことなんだけど、ペトラ…」
やっぱり風呂では声が響く。マヤは少し声を落とした。
「実はもう、手伝ってきたの」
「え! 昨日の今日で? どういうこと!?」
ペトラの薄い茶色の瞳が大きく見開かれた。
「今日ね、ミケ分隊長に許可をもらえたの。執務の休憩時間に話をして」
「うん」
「兵長もいたから、早速今日から始めようかってなって、それで…」
「へぇ、すごいじゃん! とんとん拍子とはこのことだね」
「うん…。あまりの展開に自分でも驚いてる」
「で、どうだった? うまく手伝えたの?」
「……多分。明日も手伝うことになってるし…」
「そうなんだ! 良かったね!」
ペトラはまるで自分のことのように顔を輝かせて喜んでいたが、ふとマヤは全然はしゃいでいないことに気づいた。
「あれ? マヤ、元気ないことない? どうしたの、せっかく念願の兵長の執務を手伝ったっていうのに。なんか嫌だったの? 思ってたのと違ったとか?」
「ううん、そうじゃないの」
マヤはきょろきょろと大浴場を見渡した。
「ここ… 声が響くから。それで…」
「な~んだ! 誰もいないじゃん、大丈夫だよ」
「でもまだ、脱衣所にいそうだし…」
脱衣所に通じる扉の方を心配そうに見るマヤ。
「あぁ、それはいるだろうね。まぁ… 話を聞かれて、変な噂が広がっても嫌だし…」
ペトラは意味ありげにニヤリと笑うと、急速に声のトーンを落とした。
「私も小声でしゃべるよ」