第22章 一緒にいる時間
食堂にはもう、あまり人はいなかった。
いつもなら閑散としたテーブルは淋しさを誘うものだが、今日は違っていた。
つい先ほどまでリヴァイ兵長の執務室に、二人きりでいたのだ。
少しでも役に立てたのか、手伝う意味はあったのかと心配な気持ちはあるが、一応は優秀だ、助かったと言ってもらえた。
……きっとこれからも手伝いに行っても大丈夫なはず。
そう思うとマヤの心は弾むように軽くなり、一人でいただく夕食も淋しいものではなかった。
だが、食べ終えてトレイをカウンターに返しに行きがてら唐突に思った。
……兵長の晩ごはんは?
もう少し書類を片づけてからと言って執務室に残った兵長だけれど、結局食堂には現れなかった。
時刻はじきに夜の9時になる。
食堂は明確には時間は決まっていないが、それでも自然と人の少なくなる20時過ぎあたりから料理人が後片付けと明日の下ごしらえを始める。
そうして大体は21時くらいで利用する人がほとんどいなくなり、21時半には料理人は厨房にある食料保管庫に鍵をかけ帰宅するのだ。
食べるスピードが人に比べてゆっくりなマヤが夕食を終えた今、まばらに残っていた他の兵士は皆いない。
自分が食堂を出ていけば、料理人はそのうち帰ってしまうだろう。
マヤはリヴァイの夕食事情が気にかかって仕方がない。だが今さら “食堂が閉まってしまいますよ” と呼びに行く訳にもいかないし、頼まれてもいないのに食事を運ぶことも当然無理な話だ。
気がかりなまま、ぼんやりと食堂を出た途端に誰かとぶつかりそうになった。
「すみません!」
相手の顔も見ずに謝れば、よく知る声が飛んできた。
「マヤ!」