第22章 一緒にいる時間
「あぁ…。そうだな、お前さえよければ明日も来い」
その答えが嬉しくて、声も弾む。
「はい!」
「……思ったより優秀だしな」
「……もう!」
リヴァイ兵長が冗談めいたことを言うとは思いもしなかった。マヤは思わず敬語も忘れて頬を軽くふくらませた。
「私は兵長が思うより優秀だから、明日も明後日も… ずっと来ます。兵長がもう来るなって言っても来ます!」
「そうだな。そうしろ」
まだどこか、からかうような口調のリヴァイに帰り支度を終えたマヤは再び質問をした。
「あの… 兵長は食堂へは行かないんですか?」
一向に帰り支度をしないリヴァイの様子を不思議に思ったのだ。
「俺はいい。もう少し片づけておきたい」
「そうですか…」
もうリヴァイの声には先ほどのようなからかう雰囲気は消えていた。マヤはそれ以上何も言えずに立ち上がる。
「……では、お先に失礼します。お疲れ様でした」
「あぁ、お疲れ」
頭を下げて執務室を出ていったマヤの残像を見ているかのように、リヴァイはいつまでも閉まった扉を眺めていた。
しかしいつまでも眺めている訳にもいかず、名残惜しそうに扉から机の上の書類に視線を移すと、はぁっとため息をついた。
……夢のような時間だった。
マヤが俺の役に立ちたいと、負担を少しでも減らしたいと言って執務の手伝いを申し出てくれた。
ミケの許可も無事に出て、その日のうちにこの部屋にマヤがやってきた。
そして当たり前のように一緒に書類仕事をこなした。
執務中は互いに存在を忘れるほどに集中できた。
これは重要なことだ。
マヤにはできることならば、ずっと俺のそばにいてほしい。それが任務だろうが、訓練だろうが、執務だろうが、なんでもいい。
そのためには、一日でも一時間でも一秒でも長く一緒にいるためには、その一緒にいる理由になる任務であり訓練であり執務が、滞りなく遂行されなければならない。
その点、今日のマヤと俺は充分合格だろう。
……この調子でいけば、マヤをずっとそばに置いておける。
リヴァイは静かに口角を上げると、執務のつづきをすべく書類に目を落とした。