第22章 一緒にいる時間
ミケ分隊長の執務室を出たマヤは、たった数歩隣のリヴァイ兵長の執務室の前へ。
……兵長に逢える…!
この扉の向こうにいるリヴァイ兵長が、自分を待っていると思うだけで胸がどきどきする。
「ふぅ…」
緊張をごまかすように一つ大きな深呼吸をする。
コンコンとノックをしながら、思い切って扉をひらいた。
「失礼します」
書類から顔を上げたリヴァイの表情が、一瞬だが確かにやわらかくなった。
緊張でどうにかなってしまいそうなほどカチカチになっていたマヤの体は、リヴァイの表情を見逃さなかったことにより自然な状態に戻っていく。
入室してから良い感じに脱力することができたマヤは、執務机の前に立つころにはリラックスした笑顔をリヴァイに向けることに成功した。
「お手伝いに参りました。よろしくお願いします」
「あぁ。早かったな…」
「はい。初日ですし、早く来たかったので…」
「そうか」
そう言いながらリヴァイは席を立つと、机の上にあった書類の山を一つ下から持ち上げた。
リヴァイの執務室にもミケの部屋と同じようにソファセットがある。そのガラスでできたテーブルの上に書類を置くと指示を出した。
「早速だが、今日は手始めにこの書類の記入漏れのチェックと、日付順に並べてほしい」
「了解しました」
マヤはソファの真ん中に腰を下ろすと、すぐに命じられた仕事に取りかかった。
……部屋に入る前は兵長に逢えるなんて浮ついた気持ちで緊張もしたけれど、ここには執務の手伝いに来たんだ。
少しでも兵長の負担を減らすために。
きちんと仕事をしないと。
ソファに座ったかと思うと真剣な顔をして即座に書類を手に取ったマヤを目の前にして、リヴァイは好ましく思うのと同時に普段は見られない執務モードのきりりとした表情に心を奪われた。