第9章 捕らえる
マヤの心の叫びが通じたのか、やっとオルオが現れた。
ガチャガチャと二人分の立体機動装置を鳴らしながら、小走りでやってくる。
「おはようございまーっす!」
「オルオ! 一体どういうことなの?」
マヤはオルオから立体機動装置を受け取りながら、一応小声で訊く。
「悪ぃ悪ぃ! 部屋にまで行って言うこともないかなと思ってよ」
「はい?」
「昨日よ、申請書出しに行ったときに、兵長も参加することになったんだ」
「……なんで?」
「さぁ… そこは俺にもよくわかんね」
立体機動装置を装着しながら、二人は小声で話しつづけた。
「でも多分…」
「うん」
「お前が速いから」
マヤが、だからどうしてそんな話になるのよって言おうとしたとき、兵長の声がした。
「おい、準備はできたか」
「「はい!」」
「では、始めよう」
そう言うなり、リヴァイはトリガーを引き頭上の樹の枝にアンカーを射出すると、ガスを噴かし移動した。
顔を見合わせていたマヤとオルオも、あとにつづく。
樹上で腕組みをしながら、リヴァイはオルオに訊いた。
「マヤを捕まえるんだな?」
「そうっす。マヤが飛んでから3秒数えて追いかけるっす」
兵長とオルオのやり取りを聞きながら、マヤは内心焦っていた。
……ちょっと待って! 兵長が私を追いかけるってこと?
「でも兵長なら3秒じゃ話にならないっすよ。5秒はどうっすか?」
「いや、10秒でいく」
リヴァイはマヤの方を向いた。
「マヤ、10秒だ。いいな?」
「兵長…」
「なんだ」
マヤは訊かずにはいられなかった。
「どうして急に… こんな一緒に訓練を?」
「……個人的な興味だ」
リヴァイはそう答えながら思う。
……そう、個人的な興味だ、単なる興味。マヤ、お前がこの世の誰よりも速いとオルオに言わしめたから。
俺が、確かめてやる…!