第22章 一緒にいる時間
よどみないリヴァイの答えを聞いたマヤの頬が、ぱっと喜びの色に染まる。
「正解です、兵長!」
声が感嘆の響きで、かすかにうわずっている。
「完璧な答えです!」
「そうか」
一見無表情な白く小さなリヴァイの顔は、どことなく嬉しそうだ。
「分隊長も葡萄とお花って当てたから正解なんですけど…」
少し困った様子で気遣ってくれるマヤをミケは愛おしく思う。
「はは、いいさ。葡萄とわかっても種類までは当てられなかったし、花だって全然。完敗だ」
「……そうですね。あそこまで細かく言い当てられたら、さすがの分隊長のお鼻も勝てないですよね」
「そうだな」
そう同意してマヤに微笑みを向けるミケ。同じようにやわらかい笑顔をミケに返すマヤ。
……チッ。
勝利したのは自分なのに無性に苛立つ。
リヴァイが顔には出さないが、心の中で舌打ちしているとマヤの笑みがリヴァイに向けられた。
「兵長、紅茶に詳しい兵長がやっぱり勝ちましたね」
「あぁ」
マヤがこちらを向いて笑いかけてくれるだけで、ささくれだった心が和らいでいく。
「おい、マヤ。“やっぱり勝ちましたね” って最初からリヴァイが勝つと思っていたのか?」
不満そうなミケの声。
「すみません…。分隊長の嗅覚はすごいと思ってるんですけど、紅茶のことだったら兵長の方が上なんじゃないかなと思って」
「はは、違いないな」
「さぁ、飲みましょう? このマスカットジャスミンティーは、リラックス効果があるんですよ。ねぇ 兵長?」
マヤが自分に話を振ってくれることが、こんなにも嬉しい。リヴァイはマヤの笑顔が、声が、言葉が自身に向けられるたびに気持ちがふわふわと浮き上がる感覚におちいった。