第22章 一緒にいる時間
ミケとリヴァイのやり取りをハラハラと心配そうに見ていたマヤは、“茶番だ” と言ってどうやら決着がついたらしい二人の様子に安堵する。
「マヤ」
「はい」
名を呼ばれ、返事をしてミケの顔を見ると、そこには包みこむような優しい笑顔が浮かんでいた。
「リヴァイは賛成しているし、俺も反対する理由はない。俺との執務の経験を生かして、存分に働いてこい」
「はい!」
マヤの顔が喜びでほころんだ。
「……ただし」
「……はい」
何をつけ加えられるのだろうと、慎重に返事をするマヤ。
「決して無理はしないように。夜間と調整日ということだが、体調管理を一番に考えてリヴァイと日程を調整しろ」
「了解です」
「リヴァイ」
ミケはマヤの横に立つリヴァイに頭を下げた。
「マヤをよろしく頼む」
「あぁ」
まるで父か兄かが、大切な娘や妹を男に託すような言い方だとマヤには感じられて、なんだか… こそばゆいような照れくさいような恥ずかしさがこみ上げてくる。
ひとり頬を染め下を向いていると、ミケの声ではっとした。
「ちょうどリヴァイも来たことだしマヤ、お茶を淹れてくれないか」
「あっ、そうですね。休憩するところでしたね…。すぐに淹れてきます」
マヤは一礼をすると、急いで給湯室に向かった。
マヤが出ていったあとにリヴァイは、黙って勝手にソファにどかっと座る。
その様子を視界に収めながら、ミケはぼんやりと思った。
……マヤがリヴァイの執務を手伝うようになれば、もうリヴァイはここに紅茶を飲みにやってこなくなるのだろうか…?
その答えが出るのは、もう少し先になりそうだ。
今は…。
マヤが紅茶を淹れてくれるのを待って、一緒に、マヤとリヴァイの三人で、その芳醇な香りを心ゆくまで楽しめばいい。