第22章 一緒にいる時間
マヤはミケの心の動きなど露も知らずに、話をつづけた。
「それで兵長の執務を手伝おうと思いついたのですが、訓練も分隊長のお手伝いもあります。それならここでの執務が終わったあとの時間や、調整日にやれば支障はないかなと思うのですが…」
「それはつまり、夜間や休日にリヴァイを手伝いたい… ということだな?」
心の内で暴れる何かを鎮めて、ミケは静かにそう言った。
「そうです」
マヤはまっすぐに、ミケの砂色の長い前髪に隠れている瞳を見つめた。
「……許可していただけませんか?」
………。
許可しない理由が特に見当たらない。
マヤは自分の分隊の班員ではあるが、自由時間に何をしようが規律違反でもない限り、ある程度は自由だ。
そもそも律儀にこうして許可を求めてくること自体が、不必要かもしれない。
分隊、班と分かれてはいるが、同じ調査兵団の兵士であり、上司と部下であると同時に仲間であり、個人同士で何をしようが兵団の結束を乱す行為でなければ基本的に自由である。
たったひとこと “わかった、許可しよう” と口に出せばいい。
それなのにミケは、なかなかその簡単なひとことを言えずにいる。
言葉にしてしまえば最後、マヤが自分の手の内から飛び立ってしまいそうで。
……なんて女々しいやつなんだ、俺は。
内なる自分の不甲斐なさに見切りをつけるように、わざと大きな音でフンと鼻を鳴らす。
「わかった、許可しよう。ただし…」
マヤが飛び立ってしまう心の中のイメージを打ち消すように、精一杯の抵抗を。
「リヴァイが受け入れるのならば」