第22章 一緒にいる時間
日々追われる膨大な書類の量は山のごとし。現実問題として書類の山が言葉どおりに崩れてしまえば、執務机の上は目も当てられない。そんなひどい状況になろうがあまり気にせず、書類の処理もきりのよいところで適当に終わらせることのできる自分と違ってリヴァイは… 神経質で潔癖すぎる。
執務室は常にぴしっと完璧に片づけられ清潔。書類仕事も適当に終わらせるとか、途中で保留にして翌日にまわすとか、そういういい加減な、良く言えば要領よくこなすことはない。眉間に深い皺を刻みながら、白く骨ばった手は書類を次から次へとさばいていく。
確かに夜間も調整日も執務室にこもっているリヴァイを、ミケは容易に思い浮かべることができた。
同意してくれたミケにマヤは力を得て、声に張りが出る。
「……兵長には命を救っていただきましたし、これから一緒に戦うだけではなく何か… 私にもできることはないかって考えていたんです。だから夜遅くまで執務をされていることを知ったとき、これだ!って思いました。執務のお手伝いをして、少しでも兵長のお役に立てればって。幸い、分隊長のお手伝いをするようになってから執務のやり方もわかるようになりましたし…」
「………」
俺との執務が役に立ったようで良かったなと口にしそうになったが、ミケはこらえた。
そんなことを言ってしまえば、またマヤは悪い意味に取ってしまうだろう。
嫌味を言いたい訳ではない。純粋に俺の執務を手伝ったことでスキルを身につけ、それがリヴァイとの関係を深めるものになるならば、それでいいとは思う。
そうは思うが、心のどこかでマヤとの執務の時間が自分だけに許された特別なものだったのに。それがもうすぐ、そうでなくなることが淋しくて。
マヤの幸せを願っているはずなのに。それに反して自分の心はマヤを自分の手の中に閉じこめたがっている。
そんな矛盾した気持ちにミケは戸惑っていた。