第22章 一緒にいる時間
待ちに待ったその言葉が執務室に響いた瞬間、マヤの顔は明るくぱぁっと輝いた。
手にしていた書類を置くと、立ち上がる。
「……分隊長…!」
……来たな。
ミケは内心ニヤリとする。
……新しい紅茶でも持ってきたのか?
そのような当たりをつけてみるが、どうやらそんな単純な話ではないらしいと即座に気づいた。
執務机の前にまでやってきたマヤの顔は紅潮している。
……緊張しているな。新しい紅茶という訳ではなさそうだな。
では一体なんだろう?
「……どうした。声が裏返ってるぞ?」
からかうように訊いてみる。
「許可をいただきたいのですが!」
真っ赤な顔、ぎゅっと閉じられた瞳、思い切って申し出ているのがはっきりとわかる少し震えた声。
「許可?」
「はい… あの、リヴァイ兵長の執務のお手伝いをしたいのですが…」
……なんだって?
リヴァイの執務を?
ミケは全く予想もしていなかった申し出をされて混乱した。
何がどうなってマヤがリヴァイの補佐になるなんてこと。
……というか俺の補佐はどうなるんだ。
「……マヤ、言ってる意味がよくわからんのだが。お前がリヴァイの補佐?」
「補佐なんて大げさなものではなく、ちょこっと手伝いたいだけですが…」
ぎゅっと閉じられていた琥珀色の瞳は、今は恥じらうように揺れている。
「急にどうした? ここでの執務が嫌になったのか?」
真面目なマヤに限って、そんなことが理由ではないと重々承知の上だったがミケは、一体全体どうしてリヴァイの執務を手伝いたいなどと突拍子もないことを言い出したのか知りたくて。
「そんな! 違います!」
ミケの言葉にはっとして、マヤは思わず大きな声を出す。
「分隊長の執務を手伝うようになって良かったと心から思ってます。私でも、少しでも、何かの… 誰かの役に立つんだって。そう感じることができるから」