第22章 一緒にいる時間
「楽しみだね、これから。デートだなんて自分のことのように、うきうきするわ」
胸の前で両手を組んで、きらきらと目を輝かせているペトラ。
「ちょっと待って。まだデートするなんて決まってないんだし、そもそも執務のお手伝いだってするかどうかもわからない状況なんだからね?」
「わかってるって!」
ペトラはそう言ったそばから、こう付け足す。
「デートの時は、おしゃれしなよ?」
「もう!」
「あはは、気が早いか。でも楽しみなんだもん」
目の前で笑っている友に、マヤは心からの友情を感じた。そしてもう一度。
「……ありがとう、ペトラ」
「うん!」
ペトラは元気よくひとことで返すと机の上のウサギパンを見た。
「あれ、半分こしない?」
「えっ、いいの? ペトラの大好物なのに」
「うん。なんかさ、マヤと半分こしたい気分なんだ」
「ありがとう。じゃあ私、紅茶を淹れてくるね」
「うん、お願い」
マヤは立ち上がってペトラの部屋を出ていった。しばらくすると紅茶の良い香りとともに戻ってくる。
「お待たせ」
「は~い、待たされてました~」
「あはは」
二人で笑い合っているうちに砂時計の砂が落ちきり、いつもの手順でティーポットから紅茶を注ぐ。
「どうぞ」
「ありがと!」
紅茶を受け取ったペトラは立ち昇る香りに目を細めた。
「……いい香り」
ひとしきり香りを堪能したペトラは、カッと目を見開いた。
「さぁ、うさちゃんを殺ろう!」
「え?」
過激な言葉に驚いていると、ペトラは包みからウサギパンを取り出し耳を両手で持つとあっという間に真っ二つに割った。
「あぁぁぁ! クリームが!」
たっぷり詰まったクリームがペトラの膝にこぼれ、部屋にマヤの叫び声が響く。
「はい、マヤ!」
ペトラは慌てて割ったパンを渡すと、こぼれたクリームをすくって舐め始めた。
「ふふ、ペトラったら!」
顔のまわりも指もクリームまみれになったペトラも笑う。
「あはは。ひどい状態だけど、美味しい!」
「だね」
「うん。マヤ、ウサギパンありがとうね!」
「こちらこそ半分こ、ありがとう!」
二人はにこにこと笑い合いながらパンを食べた。そして食べ終えると時計の針がてっぺんを過ぎるまで話に花を咲かせたのだった。