第22章 一緒にいる時間
丘にのぼれば思いがけずリヴァイ兵長がいて。一緒に木の下で時を過ごした。そして… また同じ時を過ごそうと約束まで。
幸せな優しい想いがあふれていく。心が満ちる。
兵舎に帰ってきてからも心は弾み、浮かれた気分でここに来た。
一番の友であるペトラに報告しようと。想いの行く末を一緒に共有してほしくて。友達だから、単純に嬉しかったことを聞いてほしかった。
でも。
ペトラだって兵長を想っているのだ。
互いの好きは違っても、それぞれの想いを大切に抱えていこうねと話したあの夜。
ペトラはこう言った。
「……だから顔を見てるだけでいいんだよ。それしかできないから」
ペトラは私が兵長と一緒に過ごしたり、これから執務を手伝ったり、丘に行く約束をしたことを聞かされて嫌じゃないのだろうか?
でも。
そういう風に考えること自体が、おこがましい気がする。
こういうときに、どうしたらいいか… わからなくなる。
もし私がペトラだったら、心に靄(もや)がかかったら正直に打ち明けてほしい、本音でぶつかってほしいと思う。
だから訊いた。
「全然! 嫌じゃないよ? あっ、でもそうだな、うらやましいってのはあるかな」
顔を伏せていたマヤの耳に明るく届くペトラの声。その響きはどこまでも曇りがなく澄んでいる。
「マヤ、確かに私も兵長が好きだよ。でもそれ以上にマヤが好き。マヤの想いが兵長に届いてうまくいくんだったら嬉しいし、私は応援する」
「……ペトラ」
「私ね、兵長のこと好きは好きでも、いつからか諦めてるんだと思う」
それを聞いてマヤは、ペトラが酔いつぶれて “女なんて抱きたいときに抱ければいい” とリヴァイ兵長が言ったのを聞いてしまった夜のことを思い浮かべた。
だがペトラが思い浮かべていたのは、食堂でマヤをじっと見つめていたリヴァイ兵長の瞳だった。今までに見たことのない、兵長があの青灰色の瞳に宿すなんて想像もできなかった渇望の光。
あのとき間違いなくマヤを、マヤだけを強く求めていた。
……そうだ、私はあのときからきっと、兵長とマヤがこうなるって予感していたんだ。