第22章 一緒にいる時間
「……葡萄水は一緒に飲んだ」
“一緒に飲んだ ” と言葉にするだけでも、どことなく恥ずかしい。
「なーんだ、やっぱ一緒に仲良くランチしてんじゃん。それでこれからは執務室で二人きりになって、丘に一緒に行く約束までしたんだから、それはもうデートだよ」
「なんか変な理屈になってない?」
「全然変じゃない、絶対デートだから!」
「……もう、ペトラったら」
強引にデートに結びつけようとするペトラに苦笑いをしていたら、なんだか言う機会を逸してしまった。葡萄水は一本の瓶で、互いに直接瓶に口づけたことを。
……まぁ、いいかな…。
お姫様抱っこの話でも恥ずかしかったのに、今度は間接キスかもしれないだなんて… そんなこと言える訳がない。
「マヤ、私は嬉しいよ!」
間接キスを言いそびれたことについて考えていたマヤは、ペトラの叫び声にびくっと肩を震わせた。
「え? 何が?」
「やだなもう、兵長との急展開に決まってるでしょ! 我が兵長派からついに兵長とデートする人が出るなんてね。感激だわ」
「……まだしてないから」
「そうなんだけどね。でも、するの確定じゃない?」
「そうかな…」
自信なさげに答えるマヤにペトラはにっこりと笑いかけた。
「大丈夫だって! あ~、早くその日にならないかなぁ。楽しみ!」
「ねぇ…」
「ん?」
マヤはペトラに訊かなければと思う。ペトラはマヤは何を深刻な顔をしているのかと思う。
「ペトラは嫌じゃないの…?」
「……何が?」
「その… 私が… 兵長と… 一緒にいたこととか… 約束したこととか…」
言いにくそうな様子でぽつりぽつりと話すマヤの顔は、ゆっくりと伏せられていく。