第22章 一緒にいる時間
「ほんとに!?」
ペトラはその大きな目を輝かせた。
「ミケ分隊長のお許しが出たら… っていう条件付きだけどね」
「そんなの、大丈夫じゃない? 許さない理由がない気がする」
「……だといいけど…」
ペトラは両手を頭の後ろに組みながら軽く伸びをして、笑った。
「朝に聞いたばかりなのに急展開で驚いたけど、良かったじゃん」
「ありがとう。でね… 約束しちゃった…」
ほんのりと頬を赤らめて足元を見ながらそう言うマヤの声は、恥ずかしさからか小さい。
「ん? 何を?」
「兵長と、また丘で一緒に景色を見ようって…」
「へぇ… 良かったじゃん…」
背中の筋肉を伸ばしながら聞いていたペトラはそう返事をしたが。
「……え!? 今なんて??」
あまりの驚きに頭の後ろで組んでいた手を勢いよく離し、バランスを崩してベッドの上で転びそうになっている。
「景色を一緒に見ようって約束しちゃった…」
「えええええええ! デートってこと?」
“デート” なる単語に今度はマヤが驚いて、勢いよく顔を上げた。
「違う違う! デートだなんてとんでもない!」
真っ赤になった顔の前で、ぶんぶんと手を振った。
「だってお昼を一緒に食べて、これから執務を手伝うことになって、次に丘からの景色を見ようねって約束したんでしょ? “次” はデートってことになるよね?」
「一緒に食べてないよ? 私がパンを食べてただけで。あっ…」
唐突に一本の葡萄水を二人で飲んだことが思い出された。
「どうしたのよ、そんな真っ赤っ赤になってさ」
「……なんでもない…」
「ちょっと! 今さら隠し事はなしだからね!」
ペトラは目を三角にして大きな声を出した。