第22章 一緒にいる時間
入浴し終え、部屋着にしている肌ざわりの良いワンピースに着替えたマヤは、ウサギパンの包みを持ってペトラの部屋の前に立った。
ノックのあと数秒で “はーい!” と元気な声がしたかと思うと勢いよく扉はひらかれた。
「あっ、マヤ! 入って入って!」
いつもどちらかといえば、部屋に入れるのをなんだかんだと理由をつけて拒み、結局は隣のマヤの部屋に押しかけてくるペトラなのに、やけに上機嫌で招き入れてくれる。
「見てよ! 掃除の成果を!」
壁外調査の前日に行った買い物の大量の荷物が、アンネのベッドの上に無秩序に散らばっていた悲惨な状況が完璧に改善されていた。
「わぁっ、すごく綺麗になってる!」
今、アンネのベッドの上に置いてあるものは、大きなうさぎの顔のクッションだけだ。ヘルネの広場のイベントで射的の屋台が出ていたらしい。その屋台でオルオが張り切って取ったというクッション。
「片づけ、頑張ったね。うさちゃんのクッションも嬉しそうね」
マヤにはうさぎのクッションの表情が、前に見かけたときよりも笑っているように見えた。
「でしょう! 私だってやればマヤの部屋みたいに綺麗にできるのよ。このクッションだって色んな荷物に埋もれちゃってたけど、こうやって飾れば立派なもんだわ。あ~、うさちゃん可愛い!」
「ペトラってほんと、うさちゃん好きだね…」
と、そこまで言ってから来訪目的を思い出すマヤ。
「あっ、これお土産」
差し出された包みを受け取り、すぐにそれが何か気づいたペトラは顔を輝かせた。
「ウサギパンだ! ありがとう、マヤ!」