第22章 一緒にいる時間
「はは、そうだな。“バンディッツ” はマヤの言うように甘いパンはないし、野郎御用達って感じだな」
モブリットのその言葉にニファも同意する。
「確かにそうですね。“バンディッツ” には若い女の子は寄りつかない感じ?」
「そうですね」
今度は女子の占める割合の多い “アメリ” の店内を思い浮かべながら、マヤは微笑んだ。
「マヤ、ハンジさんに渡しておくから」
「ありがとうございます」
「モブリットさん、紅茶の葉っぱも入ってるんだけど、それはマヤの家のやつだって言っといてくださいよ?」
ニファの補足説明に、モブリットは “あぁ…” と何かに思い当たった様子で。
「ハンジさんが前に言っていたよ、マヤの家が紅茶屋だって…。だったな?」
「そうなんです」
「わかった。俺も飲ませてもらうよ、楽しみだな」
「じゃあそういうことで…、私たちは失礼します」
ニファがそう挨拶したので慌ててマヤも頭を下げた。
「モブリットさん、よろしくお願いします」
「あぁ…、またな」
ニファとマヤの目の前で扉はぱたんと閉められた。
「あの、ニファさん」
先に立って歩き始めた先輩兵士の背中に声をかける。
「ん?」
「モブリットさん…、普通に当たり前のようにハンジさんの部屋にいましたけど…」
「あぁぁ… うん、そうだね。当たり前のようにね」
「二人はその… そういう関係なんですか?」
モブリットがハンジを想っていることは気づいているというか、周知の事実であるとマヤは思うのだが、公然と夜の私室に一緒にいる関係だとは知らなかった。
マヤと違ってニファは、なんの驚きも戸惑いもなく平然と当たり前のように接していた。
……もしかしたら私が知らないだけで、ハンジさんとモブリットさんはすでに、おつきあいをしているのかもしれない。
そう思ったマヤは、ニファに質問せずにはいられなかったのだ。