第22章 一緒にいる時間
「まさか本当に研究していたなんて…。さすがハンジさん!」
「だよね~」
「あ、そうだ。その研究ってどこでやってるんですか? ハンジさんの執務室は行ったことあるけど、そういう薬の開発をしてるような雰囲気は全然なかったけど…」
マヤはハンジの執務室を思い返した。ミケ分隊長に負けず劣らず部屋は散らかっているが、薬品の研究ときいて頭に浮かぶような試験管やビーカー、三角フラスコ、メスシリンダーやシャーレなどは見たことがない。
ちょうどそのとき、二人は階段を上りきり三階に到着した。
「研究室が別にあるのよ」
ニファはそう言って廊下をずんずんと進み、ある部屋の前でぴたりと立ち止まった。
「ここがハンジさんの部屋。でね…」
すっと顔だけを、廊下のさらに奥に向ける。
「あっちは兵長や団長の部屋があるんだけど。昔は一番奥の部屋がずっと空き部屋だったんだって。そこを今はハンジさんが研究室として使ってるのよ」
ニファにならって廊下の奥をじっと見つめながらマヤはつぶやく。
「……この一番奥に研究室が…。ニファさんは行ったことがあるんですか?」
「それがないのよ。多分、モブリットさんだけしか入ったことないんじゃないかな?」
「やっぱりモブリットさんは特別なんですね」
「そそ。でも人体実験されるのヤだし、研究室には入れなくてもいいかな」
「あはは…。それもそうですね」
「さて! ハンジさん、いるかな?」
ニファは扉をノックした。
「ハンジさん、ニファです」
がちゃりと鍵の開く音がして、すっと扉がひらかれた。
「やぁ、ニファ。どうしたんだい?」
………!
顔を出した人物の顔を見て、ニファの一歩後ろに立っていたマヤは驚きで目を見開いた。
「モブリットさん、ハンジさんは?」
全く驚きもしないでニファがハンジの居所を訊いている。
……ここってハンジさんの部屋よね? 一体どうなってるの?