第22章 一緒にいる時間
「違うのよ~! 本当に研究してるの。普通の風邪薬っていうか喉の痛みに効くのとか便秘用の腹下しの薬とかはいいんだけど…」
意味ありげに言葉を止めるニファ。
「そういうの以外の薬って一体…?」
不安そうなマヤの声を煽るようにニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「まるで魔女みたいに様々な薬を開発してるの。笑い薬に泣き薬、怒り薬に… 寝言薬…」
「え? ちょっと待って、ニファさん。笑い薬とか泣き薬とか、なんですか?」
「そのまんまよ。飲んだら薬が切れるまで笑ったり泣いたり怒ったり。寝言薬はただの睡眠薬ではなくて、眠って寝言を言うの。ただ眠るだけじゃハンジさんは満足できないんだって。寝言で普段は隠しているその人の本音が知れるとかなんとか…」
「……それ、本当ですか…」
マヤは青ざめている。
「うん」
「かなり… やばくないですか…?」
「ヤバいね。でも、まだまだもっとヤバいのもあるよ。毛生え薬に興奮剤、惚れ薬、自白剤、キス魔薬」
「キス魔薬?」
聞いたことのない単語に驚く。というか驚きっぱなしで疲労感が半端ない。
「……なんでも飲んだらキス魔になって誰でも目についたそのへんの人にキスしまくるんだって。惚れ薬との差は、惚れ薬が一人に対して効くのに対してキス魔薬は誰彼かまわず無差別攻撃でキスするらしいよ?」
「なんて恐ろしい…。それを飲んだ人はいるんですか?」
「ううん、惚れ薬とかキス魔薬や自白剤はまだ完成してないって言ってた。でも興奮剤は出来てそうかな? モブリットさんが時々おかしいから」
「……それって…」
「そそ、ハンジさんの薬の人体実験は、ほぼモブリットさんが引き受けてるから」
「………」
……モブリットさん、いくらハンジさんのことが好きだからって…。
マヤはモブリットのハンジへの献身ぶりを、あらためて思い知らされた。