第22章 一緒にいる時間
一般棟を出て、幹部棟に向かう道すがら。
「私、幹部棟の三階に行くのは初めてです」
「あぁ、マヤの上司はミケさんだもんね。私はハンジさんだし、遊びにおいでって言われて何回かあるのよ」
「へぇ…、そうなんですね。何をして遊ぶんですか?」
「うーん、遊ぶっていうか結局あれは、うまい具合に手伝わされているのかも」
「………?」
ニファの言っていることの意味がさっぱりわからず、マヤは眉根を寄せる。
黙ってしまったマヤの小難しい顔を見て、ニファはぷっと吹き出した。
「あはは、ごめんごめん! ちゃんと説明するね」
ちょうど幹部棟に到着し、階段を上り始める。
「遊ぼうって夜に部屋に班員の子何人かが呼び出されてね、ババ抜きだったり王様ゲームだったり、早食い早飲み競争だったりその時々で違うんだけど」
「楽しそうですね」
「うん。そのゲームをしているときはいいんだけどね。問題は罰ゲームなのよ!」
「……罰ゲーム?」
「そう。罰ゲームと称して、ハンジさんの研究中の怪しげな薬の瓶をずっと振りつづけろとか、完成した薬を飲んでみろとか、そりゃもう無茶振りされるんだ。結局あれって薬の攪拌をやらされてるんだよね。それに薬を飲むのなんて人体実験じゃない?」
ニファの口からぽんぽんと飛び出す “薬” なる言葉に、マヤは驚いてしまった。
「薬って…?」
「あれ? 知らない? ハンジさんが色々作ってるの」
「噂でハンジさんが研究室で何かを作ってるとは聞いたことがあるけど、半分冗談というか…」
「あ~、ハンジさんの変人ぶりを誇張するための作り話みたいな感じに思ってた?」
「そうそう、そんな感じです」