第21章 約束
……兵長も、同じことを…?
どういう意味だろう。
執務を手伝いたい、というのは絶対違う。なら、ひとりの部下としてそばにいて力になりたい、の部分だ。
兵長は部下ではないから “ひとりの上司として” そばにいて力になってやりたいと思ってくれているんだわ。
マヤなりにリヴァイの言葉に納得がいく。
「だからマヤ、お前の気持ちはよくわかっているつもりだ」
「……はい」
「俺は…」
リヴァイは言いかけた言葉をのみこんでしまった。
マヤから葡萄水の空き瓶を “捨てといてやるから” と取り上げると、持ち帰るべく紙袋に入れる。
捨てる気など、これっぽっちもない。
自室の机の上にでも飾ってやる。
目に入るたびに思い出すだろう、瓶にふれていたマヤのくちびるを。ささやかに満たされた俺の仄暗い欲を。
内面に巣食うマヤへの欲にほんの少しの間、気を取られていると。
マヤが俺の買い物に興味を示したから、羽根はたきを見せてやった。
やわらかいと微笑みながら羽根はたきを撫でている。
丘に吹く風もやわらかい。
穏やかで、幸せな午後のひととき。
こういうのも悪くねぇなと思っていたら。
はたきからミケの話になって、気づけばマヤがこう言っていた。
「執務のお手伝いをしたいのですが…。ご迷惑でしょうか?」
思いもかけない申し出をされて困惑する。
聞けば、マヤは俺に恩義を感じているらしく、俺の役に少しでも立つならと、負担を減らせるならと、執務の手伝いを願い出てくれたのだ。
ありがたい申し出ではあるが、受ける訳にはいかねぇ。
執務の補佐なら俺の班のやつらにさせる。今手伝っているミケの執務はどうする気だ。大体ミケの許可は得ているのか。