第21章 約束
「補佐なんて立派なものじゃないんです。リヴァイ班の一員じゃないこともわかってます。だけど、ひとりの部下として自分の自由時間に兵長のお手伝いを少しでもしたいと思っちゃいけませんか? そばにいてあなたの力になりたいと思っちゃ駄目でしょうか?」
感情のまま、なかば叫ぶように想いをぶつけてしまう。
最悪だと思った。
こうやって伝えたい本人を目の前にして言葉を投げつけてみれば、自分がどれだけ勝手なことを押しつけているかが痛いくらいにわかってしまった。
……こんなの、全然リヴァイ兵長のためなんかじゃない。
私が兵長の事情も状況も感情も何もかも考えずに、一緒にいたいと駄々をこねているだけだ。
でも、嘘なんかじゃない。
兵長の役に立ちたいと思った。なんでもいいから手伝って、少しでも兵長が助かるなら、楽になるならと思った。
……そういう気持ちは全部、建前だったの?
こうして執務の補佐は必要ないと拒絶されそうになったならば、剥き出しになった想いは… 想いの中心にあったものは “そばにいて” 力になりたいだった。
結局、そばにいたいだけ。一緒にいたいだけ。自分の感情ばかり。
……どうしよう…!
今さっき、兵長にぶつけてしまった言葉を全部、拾い集めて回収したい。
この手に持っている羽根はたきで埃を払うように、綺麗に消してしまいたい。
でも口にしてしまった想いは、言葉になって相手を貫いてしまった刃は決して。
……なかったことなんかにできない。
それでも今の気持ちを伝えることなら、何度でもできるはず。
内省したマヤは隣にいるリヴァイを真っ向から見つめた。
「……兵長、すみません。感情的になってしまって…」
執務のお手伝いのことは忘れてくださいと言おうとしたとき。
「いや、よくわかるから…」
「………?」
「……俺も同じことを思っている」