第21章 約束
……言った…。言いきった!
マヤは無茶なお願いだと重々承知のことを、一気に伝えられた達成感のような感覚すら持ってしまった。
だがすぐに、自身の中の達成感など問題ではないことに気づく。
リヴァイ兵長に想いは届いたのかどうか。
それが一番大切なことであるのに。
……兵長はどう思われただろうか…。
先ほどは確かに穏やかな、やわらかい表情で静かに聞いてくれていた。
けれども今は…?
そう思えば急に怖くなってきて、ぎゅっとマヤは目をつぶる。
この世から自身の鼓動以外の音が消えた気がした。
何秒経ったかわからない。
「……お前の言いたいことはわかった」
聞こえてきた声に、マヤは目を開ける。
「だが… 認められねぇ」
「どうしてですか…?」
「マヤ、お前が自分で言ったとおりだ。お前は俺の班員じゃねぇ。大体ミケの手伝いはどうなるんだ。引き受けた仕事をおろそかにするのは感心しねぇ」
「あ…」
マヤは肝心なことを言い忘れたと青ざめる。
「違うんです! 分隊長の執務のお手伝いはこれまでどおりにします。おろそかにしたりなんかしません」
「だったら、どういう…?」
リヴァイは不可解そうに眉を寄せる。
「午後の第二部終了後… 分隊長のお手伝いのあとの18時以降や、調整日にお手伝いしたいんです」
「ハッ、それだとお前の休息がなくなるだろうが…。お前の気持ちは嬉しいが、俺に執務の補佐は必要ねぇ。これまでだって補佐なしでやってきたんだ。これからだって必要ねぇし、どうしても要るときは俺の班のやつらに補佐を…」
「補佐じゃないです!」
気づけばマヤはリヴァイの言葉を遮っていた。