第21章 約束
マヤは素晴らしく手ざわりの良い羽根はたきを撫でていた手を止めた。
「あの…! 兵長…」
そして… 思い切って進言してみる。
「執務のお手伝いをしたいのですが…。ご迷惑でしょうか?」
「……あ?」
唐突な申し出にリヴァイは、訳がわからないといった風情で眉間に皺を寄せる。
マヤにしたって、いきなり執務を手伝うと言ったところで二つ返事で承諾してもらえるとは思っていない。
「……ずっと、兵長に何か…、なんでもいいから私にできることはないかと考えていました。兵長には命を助けていただいて…。守ってくれると約束もしていただいて…。私も兵長のために何かしたいんです」
自身の真摯な気持ちを伝えるために、ゆっくりと話をつづけていく。
「調査兵団にいる以上、心臓を捧げて戦う…。きっとそれが私にできることだと思うんです。ミケ分隊長にだって、エルヴィン団長やハンジさんにだって、一緒に戦うことが兵士である意義だと。でも兵長…、あなたにはそれだけじゃ嫌で…。なんでかわからないけど、もっと兵長のそばで私にできることはないのかなってずっと思っていて…」
そこまで話してマヤは、そっとリヴァイをうかがう。反応を知るのは怖かったが、それでも自分のとんでもない申し出をつづけるには、後押しする勇気が欲しい。
完全なる拒絶すら覚悟していたが、リヴァイの表情は思いのほか穏やかで。内心ほっとしながら言葉を再び選び始めた。
「そんなとき… 昨日の夜のことですが…、見たんです。兵長の執務室の窓の明かりを。遅くまでお仕事をされているんだなって。エルドさんが言っていました。夜も調整日もお仕事してるって。……いくら兵長が強くても、きちんと休息を取ってほしいです。だから、たとえわずかでも私がお手伝いすれば、執務による兵長の負担が減るのではないかと思うんです。リヴァイ班でもない私が、こんなことを言うのはおこがましいと承知の上です。でも兵長の両肩にかかっている負担を少しでも減らせたら…。そう思うんです。お願いです、お手伝いさせてくださいませんか?」