第21章 約束
……ペトラに買っていってあげよう!
ペトラのためにウサギパンを一つ、トレイに乗せた瞬間に新たな考えが浮かんだ。
……そうだ、ハンジさんたちにも買おう。茶葉と一緒に渡そう!
医務室にいたマヤを見舞ったハンジにナナバ、そしてニファ。あのとき彼女たちに父の茶葉をあげると約束したことを思い出したのだ。
自分の思いつきにさらに気分を良くしたマヤは、にこにこと微笑みながらトレイにウサギパンを三つ追加した。
会計を済ませ、店を出る。
右肩からは服の入った紙袋、左肩からは麻ひもで編んだ小ぶりのショルダーバッグをさげ、両手でパン屋の紙袋を抱えたマヤは満足そうだ。
重みが、幸せ。
今日は他にも下着や本を見てみたかったが、すっかり買い物に満足したマヤは、それらは次回にしようと思った。
……あっ! 割れ角!
下着や本は今度でいいけれど、アルテミスにあげる割れ角は今日、買わなくちゃ!
マヤは愛おしい愛馬アルテミスを思い浮かべながら、食料品店へ急ぐ。
店に入ると、様々な食材がごった返している店内の隅に、ひっそりとそれは売られていた。
“割れ角”
それは、割れてしまった角砂糖。
割れたり欠けたりして売り物にならなくなったものを、安く販売しているのだ。
マヤはそれを、アルテミスに買ってやっていた。
割れ角も忘れずに買って大満足のマヤは、さて… どうしようと立ち止まった。
このまま兵舎に帰るか…。いやでも、せっかくの調整日。街に買い物に出てきたのだ。お昼を食べて帰ろうか。
………。
しかし、よく考えたらウサギパンを四つも予定外に買ってしまった。そのことは大好きな友達や先輩に贈るためなので後悔はないが、財布が軽くなってしまったこともまた事実だ。
……ランチはやめておこう。