第21章 約束
「……執務が大嫌い?」
やっと出てきた言葉は、単なるおうむ返し。
「そう。あのときね、兵長の執務を初めて手伝ったとき。オルオがさ、俺も手伝うとかしゃしゃり出て、ほんっとに余計なことするよね!ってムカついてたんだけど、結果としてはオルオがいて助かったと思ってるんだ」
「……そうなんだ」
「うん。張り切って振り分けられた書類の整理を始めたのはいいけど、5分もしないうちに頭が痛くなってきてさ。オルオが私の分もほぼやってくれた。正直あのとき、兵長と二人きりだったら書類を投げ出す訳にもいかないし、発狂してた」
「……発狂って…」
物騒な言葉に今度はマヤが苦笑いをする。
「頭、爆発するかと思ったもん。よくマヤは、ほぼ毎日ミケ分隊長の執務なんか手伝ってるよね。感心するわ。私には無理、絶対無理!」
「あはは…」
「だからね、もう執務の手伝いなんかやらないって決めたんだ。たとえ兵長と一緒でもね。あのときは兵長と同じ部屋で執務をするっていう状況にも憧れたけど、やってみたら別に兵長と何かある訳でもないし、ひたすら頭痛がするだけで苦痛だったわ」
ペトラはそのときの頭痛を思い出したのか、こめかみを指で押し顔をしかめた。
「大体私、リヴァイ班なんだから、無理して執務なんか手伝わなくても兵長のことは訓練とかでいつでも見られる訳だし」
「それはそうだね」
「……という訳で!」
ペトラはテーブルを、ばんと叩いた。
「私は執務は手伝わない。でもマヤはどうぞ、手伝って! リヴァイ班じゃないとかそんなことで私に遠慮なんてする必要全くないからね?」
「う、うん…」
ペトラの勢いにたじろぎながらも、マヤはなんとかうなずいた。