第21章 約束
食堂には、本日が調整日以外の者は誰も残っていなかった。
調査兵団の調整日とは、すなわち休日であるが。
一般の商店や勤め人が決まった曜日に休むのとは違い、定休はない。各分隊内で事情や兵士の希望を折り合わせて調整していく。よって同じ分隊内、同じ班であっても必ずしも調整日が同一とは限らない。
今日は第一分隊第一班所属のマヤは、単独での調整日だ。エルドと壁外調査の前日に交わした約束の飲み会に誘われて、リヴァイ班の皆と同じ日に希望を出したのだ。
誰か一緒に朝食をとる人はいないかと席を見渡すが、見当たらない。軽く落胆してひとり席に着く。
「……いただきます」
いつもしているように両手をきちんと合わせてパンやスープを食べていると、元気な声が食堂に響いた。
「マヤ!」
声のした方を振り向けば、ペトラが笑顔でやってくる。
「ペトラ、おはよう。調子はどう?」
「大丈夫だよ!」
向かいの席に座りながら答える様子は元気はつらつだ。
「夜食を食べて、すぐにそのまま寝ちゃった。さっき起きたばっかだけど、もうすごくスッキリだよ。やっぱ朝ゆっくり寝れるのは最高だね」
「そう、良かった」
「うん、それでね! あの夜食、めちゃくちゃ美味しかった。サラダはシャキシャキだし、チキンなんか冷めてるのにジューシーでさ」
「あぁ わかる! あそこの鶏肉って美味しいよね、やわらかくて」
「そうそう…」
口数が急に少なくなったと思ったらペトラは、噛み応えのある食堂のパンと戦っている。
それを見てマヤも、しばらく食事に集中した。
「ねぇ」
呼びかけられ顔を上げると、すでにペトラは食べ終わっていた。
「可愛いワンピースを着てるけど、どっか行くの?」