第21章 約束
……眠れない…。
マヤは今、布団の中で “眠りたいのに眠れない” 状況におちいっている。
部屋に帰ってきてからしばらくして大浴場に行った。親しく話すような相手とは会わずに黙々と入浴を終え、帰ってきた。
髪を乾かしていたら、どっと眠気が襲ってくる。
楽しかったとはいえ、初めて飲みに行ったリヴァイ班のエルドとグンタ。無自覚ながら緊張もあったのだろう。
悪気はなかったとはいえ、ペトラを酔いつぶしてしまった。せっかくの楽しい酒の席なのに、ずっと寝ていたペトラには気の毒なことをした。
入浴して身体が温まったら、急に疲れが出てきた感じがする。
……今日はもう寝よう。さっきのペトラからオルオへのありがとうのこともあるし、気持ち良く眠れそう。
そう思って床に入ったのに、なぜか目が冴えてしまった。
身体はずんと鉛のように重くてそのまま沈んでしまいそうなのに、頭だけが何本もの路地をあてもなくさまよっては、袋小路に迷いこむ。そしてそのたびに袋小路の先に何か… かすかな光のようなものを感じて目が冴えていく。そのような感覚に囚われて眠れずにいた。
……なん… だろう。あの光?… は…。
肉体は沼に沈んだまま意識だけを掴めそうで掴めない光に集中して幾たびもさまよっていると、唐突に袋小路の先に灯っている光の正体がわかった。
それは幹部棟の二階でただ一部屋だけ灯っていた、リヴァイ兵長の部屋の窓。
……兵長…。
光の正体に気づき、自身が何に囚われて眠れなかったのか理解した途端に、沼の底に沈みきっていた肉体をも浮かび上がってきた。
……エルドさんが、いつも明かりがついてるって言ってた…。
兵長はあんな夜遅くまで、お仕事をしてるんだわ…。