第21章 約束
マヤがおやすみの挨拶をするとオルオもつづいた。
「またな。お前寝不足なんじゃねぇの? 明日は休みなんだし、よく寝ろよ」
「……うるさいわね…」
まだ眠いのか、どことなく歯切れが悪い。
「マヤ、おやすみ」
そのまま扉をぱたんと閉めてしまった。
「……おいおい、俺には言ってくれないのかよ」
目の前で閉められた扉の前でしょんぼりとするオルオにマヤが何か慰めの言葉をかけようとしたそのとき。
かちゃりと扉が薄くひらいて、中から聞こえるか聞こえないかの音量でペトラの声が漏れてきた。
「オルオ、ありがと」
「へ?」
すぐに扉は閉められてしまったが、確かに耳に届いたペトラの声。
「なぁ、今の聞いた? マヤ、お前も聞いた?」
顔を赤くして興奮しているオルオを微笑ましく思いながら、マヤは同調した。
「聞いた聞いた! 良かったね、オルオ!」
「おぅ!」
ガッツポーズを作って喜んでいたオルオだったが、すぐに気づいた。
「お前の部屋って隣だよな?」
「あぁ、うん」
「じゃあ、ここでお別れだな。おやすみ!」
「おやすみ」
鼻歌まじりで軽やかに帰っていくオルオを見送りながら、マヤは心からオルオのために喜んだ。
自分はペトラの友達で、ペトラの気持ちがもちろん大切ではあるのだが、同時にオルオの友達でもあり、オルオからペトラへの恋心を相談されてもいるのだ。
酔っぱらったペトラを背負って帰ったオルオに、ペトラが礼を言い、オルオが喜んでいる。
その状況が、マヤには自分のことのように嬉しかった。
……ふふ、今日はなんだか、いい夢が見られそう!
マヤは微笑みながら自室に入っていった。