第21章 約束
「ここで解散。マヤ、また行こうな」
「はい、エルドさん」
にこやかに微笑んだマヤにグンタも声をかける。
「マヤ、またな。オルオ! ちゃんとペトラを部屋まで送ってやれよ! じゃあ俺、急ぐから!」
風呂の混雑具合が気になるグンタは、軽く手を上げると行ってしまった。
「……あいつ、ほんとに風呂が好きだよな」
グンタの消えた方に目をやりながらつぶやいたエルドは、もう一度オルオとペトラとマヤに向き合った。
「ではまた。オルオ、ペトラをよろしく」
いつの間にかオルオの背中で再び眠ってしまったペトラに優しいまなざしを最後に投げて、エルドも去った。
「「お疲れ様でした」」
頭を下げたオルオとマヤは、そのまま女子の居室棟の一階の廊下を行く。
すぐにペトラの部屋の前に到着すると、マヤは気持ち良さそうに眠っているペトラに声をかけた。
「ペトラ、起きて? 部屋に着いたよ」
「ん~、うん…」
オルオも気遣わしげに訊く。
「おろすぞ?」
「ん~…、了解…」
かがんだオルオの背からゆっくりとおりたペトラは、まだ若干ぼーっとしているが、それでもごそごそと斜め掛けしているポシェットから鍵を取り出した。そして鍵穴にずぶっと鍵を突っこんで勢いよく扉を開ける。
「ペトラ、これ…」
マヤが夜食を差し出すと、へらっと笑って受け取る。
「ありがと」
「ねぇ、一緒にいようか? それ食べたら、一緒にお風呂に行く?」
「あぁ、うん… 一人で大丈夫。食べたらまたちょっと寝たいし」
「そう、わかった。じゃあ、おやすみ」
マヤは大きくうなずくと、にっこりと笑った。