第21章 約束
「お? 起きたか? ……まったく寝すぎなんじゃ…」
背中のペトラの方に精一杯顔を向けながら、オルオが言うか言わないかのうちに。
「えええええ! ちょっと! なんでオルオにおんぶされてる訳? 変態!」
「おいおい、それはないだろ? お前が酔っぱらっちまったから人が親切に…」
また最後まで言わせてもらえない。
「余計なお世話よ!」
「ペトラ、ごめんね」
いつの間にやらオルオの隣に来ていたマヤが謝った。
「マヤ! なんか気づいたらオルオに…! 一体どうなってるの? っていうかなんでマヤが謝るの?」
「あの葡萄酒を飲んですぐに寝ちゃったのよ。私がすすめたお酒だし、絶対一杯で止めなきゃいけなかったのに。ごめんね。大丈夫? 気分悪くない?」
「うん… 大丈夫。おなか… 空いた…」
きゅるるると腹の虫も鳴き、自らの空腹に気づいた途端にペトラは大人しくなった。
「ペトラ、これ… 夜食を包んでもらったの」
手に持っていた包みを持ち上げた。
「部屋に帰ったら食べて?」
「うん」
「それから空きっ腹にお酒いっぱい飲んじゃったし、あんまり歩かない方がいいと思うの。ふらつくかもだし、おなかも余計に空いちゃうでしょ?」
「うん」
「だからこのまま、オルオに部屋まで連れてってもらおうよ?」
「………」
ずっと素直に返事をしていたペトラは途端に黙ってしまったが、次のマヤの笑顔を見て考えを改めた。
「……ね? お願い!」
「……わかった。他でもないマヤの頼みだもん、仕方ないわよ」
どうなることかと見守っていたエルドが、ぱんっと手を叩いた。
「一件落着! さぁ、帰ろうか」
「お前ら、急げよ。風呂が混む!」
「「はい!」」
広場から放射状に伸びている調査兵団の兵舎方面の道に、進む五人の影が落ちた。