第21章 約束
そのエルドの言葉を受けて、オルオはゆっくりと立ち上がった。
「……仕方ないっすね。エルドさんやグンタさんに迷惑かけられないし。ここは俺が」
まるで言い訳をするように口の中でごにょごにょとつぶやいたかと思うと、よく寝ているペトラの肩を掴んだ。
「おい、帰るぞ」
「……う、うーん…」
ペトラを背負うのに一旦、ほんの少しでも起きてもらおうと肩を揺さぶってはみるが反応が悪い。
「……起きそうにないね…」
心配そうな顔をしているマヤに、オルオは困り顔で。
「どうしよ?」
「うーん、私も手伝うからまずは立たせてみる?」
「じゃあマヤ、そっち頼むな」
相談している二人にエルドが提案した。
「ちょっと待て。急に立たせるのは良くない。まずは椅子の背に寄りかかるように体を起こせ」
「はい」
言われたとおりにやってみる。いきなり立たせようとするよりは簡単にできた。
「しかしよく寝てるな…」
椅子の背にもたれかかってもなお、一向に起きる気配のないペトラの顔を見ながらグンタがつぶやいた。
「なぁオルオ、これおんぶじゃなくて抱く方がよくねぇか?」
「へ? 抱く?」
グンタの提案を聞いた瞬間に頭のてっぺんから足の爪先まで真っ赤になったオルオは素っ頓狂な声を出した。
「馬鹿。変な想像してんのか? 普通にこう… 横向きに抱けって言ってるんだけど?」
横抱きのジェスチャーをしながらグンタが言えば、エルドが補足した。
「この間の壁外調査で兵長がマヤにやってたやつな…」
今度はマヤが全身を真っ赤っ赤にする番だ。
「あれ…、なんて言うんだっけ?」
エルドの瞳はまっすぐに自分に向けられており、明らかに回答を求めていると知ったマヤは恥ずかしさを抑えて答えた。
「……お姫様抱っこです…」