第21章 約束
「……そうなんだ…」
グンタの解説にマヤはがっかりしている。それを横目で見ながら元気よくオルオが叫んだ。
「じゃあやっぱ、ゲルガーさんじゃね?」
「それも外れ」
今度はエルドが答えた。
「……四天王のひとりは、ハンジさんだよ」
「ハンジさんが酒豪四天王…」
マヤは飲み会でハンジに酒をすすめられたことを思い出した。
あとで聞いたところによると、あのときの葡萄酒のダブルマグナムボトルの残りは、ハンジがラッパ飲みで一気に片づけたらしい。
「……ハンジさんなら納得です…」
そうつぶやいてうなずくマヤと、目を輝かせるオルオ。
「へぇ~! ラドクリフ分隊長より強いなんて、すげぇなハンジさん!」
「だよな! あの人、なんでも規格外だしよ」
嬉しそうにグンタは笑ったあとに、グラスの酒をぐいっとすべて飲み干した。
「本当にあの人には毎回度肝を抜かれる。まさに “奇行種” だよな」
エルドもやれやれといった様子ながらも、親愛の情が滲み出ている。
「巨人の奇行種は苦手だけど、ハンジさんなら大歓迎だなぁ」
マヤは大好きなハンジ分隊長の顔を思い浮かべながら自然と笑顔になった。
「オルオ、ハンジさんくらいにお酒が強くなったら、ペトラ専用介抱人に決定だね!」
「お、おぅ」
頬を染めたオルオはあらためて、鍛えて酒に強くなるぞと誓うのであった。
「……そろそろ帰ろうか」
エルドのかけ声でテーブルの上を見渡せば、酒はエルドとグンタ、肉はオルオ、野菜と果物はマヤの活躍で綺麗に平らげられていた。
「……だな。早く熱い風呂に入りてぇ」
グンタが大きく伸びをしながら立ち上がった。
途端に歌うような口調の店員が飛んできた。
「夜食になりま~す~♪」
「ありがとうございます」
夜食を受け取りマヤも席を立つ。
「オルオ、ペトラはお前が連れて帰るんだろ?」