第21章 約束
しばらくの間は突っ伏しているペトラを囲んで、皆がわいわいと談笑しながら食事を楽しんだ。
オルオは先輩兵士の言いつけどおりに肉を頬張っていたが、わずかに不服そうで。
「……もうちょい飲んだって俺、酔わねぇのによ…」
とつぶやく声が、マヤの耳に入ってきた。
「ねぇ、オルオ。飲み足りないの?」
「当ったりめぇよ!」
「……でもこのままオルオがお肉を食べつづけて酔わずにいたら、ペトラをおんぶして帰るのは、エルドさんじゃなくてオルオになるんじゃない?」
「………!」
ほろ酔いでほんの少し赤くなっていたオルオの頬が、違う意味でさらに紅潮した。
「そ、そうだな! ……仕方ないよな? 誰かが背負わないといけねぇんだし? こいつ重いから先輩に迷惑かける訳にいかねぇし? だろ?」
「そうだね」
にこにこしているマヤを席の向かい側からじっと見ていたエルドだったが、オルオが便所に立つとすぐさま声をかけた。
「うまくオルオに言ってくれて助かった。すまないな」
「え? そんな謝ってもらうようなこと何もないですけど」
思いがけずエルドに頭を下げられて、マヤは慌てる。
「いや…、あいつ… 見かけと違って酒が弱いんだ。でもいつも無理して自分の限界より飲んでつぶれる。心配なんだよ…」
エルドはオルオのいる便所の方に目をやりながら。
「でも本人はもっと飲みたかったんだろうし。そこへマヤが一番オルオに効く方法でおさめてくれたから… ありがとう」
「エルドさん…」
「まだお前のことはよく知らないが、今日見ていただけでも人の気持ちを汲み取れるいいやつだな」
自分では大したことをしたとは思っていないが、こうしてリヴァイ班の四人の中で実質リーダー格のエルドに褒められて、マヤはくすぐったいような気持ちになった。
「……ありがとうございます」
「これからもオルオやペトラはもちろんのこと、俺らとも仲良くしてくれ」
「はい! こちらこそよろしくお願いします」